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観客たちは見たこともないラバナスに、手を叩いて喜んだ。
カメラバナス。しかし、その歩みはのろい。
直径一メートルの巨大な甲羅が重すぎるのだろうか、ちびりちびりとしか進まない。
頭を出していないせいか、進路は右へ右へと傾いていく。
カメの姿を目にとめて、シンタロウが走り出した。
軽快にジャンプして、カメの脚をつかもうとする。が、瞬時にカメは脚を引っ込める。この動作はやたらと早い。
サルモドキが鉤爪で叩くも、分厚い甲羅にはまるで歯が立たないようだ。
何度もパンチを食らわせるが、びくともしない。逆にヤツの拳の方が痛そうだ。
「あの鉄壁のガードをどう破る?」
梅田さんが首をひねっているが、そんなもの考えるまでもない。
「あんなの、硬いだけだ。ひっくり返しちまえば、終わりだ。シンタロウ、ひっくり返せ! 持ち上げろ!」
オレの作戦を聞いて、サルは亀の下に手を入れる。
力を込めて持ち上げようと踏ん張るが、その重さは見た目以上らしい。とてもひっくり返せそうにない。
苛立ちまぎれに、甲羅を殴り、蹴るも、まったく反応なし。相手は甲羅から出てこない。
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