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ガラス窓の向こうから、葵さんが手をあげ、回転する仕草を見せる。
オレはそれを真似て、身体中すべてに風が当たるようにクルクルと回った。
六十秒の台風に耐えて、ようやく小部屋から解放される。
今度は手洗いだ。蛇口に手をかざすと、少量の水と泡状の洗剤が出てきた。
鏡の横にあるアイパッドくらいのモニターで、手洗い動画が始まった。
それに合わせて、指をこすり、手を重ね、肘まで洗う。
画面のカウントダウンに従って十分にすすいだ後、ジェットタオルで水気を切る。
せっかく乾かしたかと思ったのに、最後に謎の液体を手にかけられ、これを擦り込むように言われる。これで手洗いは終了だ。
ビニールの薄い手袋をはめ、自動ドアの前に立つ。が、ドアが開かない。
壊れているのかと思いきや、横の小さなボックスに手をいれないと駄目らしい。
箱の中に手を突っ込むと、また謎の液体を噴きかけられた。そしてドアが重々しく開いた。
「さあ、中に入って」
こんな面倒くさい手順を踏まないと、研究室には入ることが許されないのだ。
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