第18話 鉄壁

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オッサンはしきりにうなずいているが、きっと話なんか聞いちゃいない。 ガラスの向こうなんて一切見ずに、葵さんの顔を覗きこんでうっとりしている。 「同定されたウイルスは、結晶化され、あの中で保管されているの」 研究室の奥には、さらにガラスで仕切られた区画があった。 中には貸金庫みたいに、小さなボックスが縦横ずらりと並ぶ棚が設置されている。 研究員のひとりが、区画に入ろうとしていた。 壁面の操作盤をタッチし、暗証番号を入力。 ここは厳重なセキュリティーの中にあって、さらに厳重に管理されているらしい。 「はい。これで説明は終わり。早く外に出るわよ。タバコが吸いたくてしょうがない」 あれだけ手間をかけて入室したのに、説明はもう終わり?  「ちょっと待ってくれよ。ここがすごい研究室だってことはなんとなくわかった。でもオレが知りたいのは、あんたたちザック&バーチがなんでラバナスの運営なんかやってるかってことだ。そもそも、ここにはラバナスなんていやしないじゃないか」 葵さんは当然のことのように返答した。 「いるじゃない、ここに。こんなにたくさん」 指差したのは、貸金庫。最重要警戒区画の、あんな小さな箱の中にラバナスが? どういうことだ? 〈 つづく 〉
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