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クマは従順に向きを変え、浴槽の中に警棒と手を突っ込んで、糸の網を引き千切った。
やっと両手が自由になったサルモドキは、まとわりつく糸を払いながら起き上がる。
ぬいぐるみクマは、巨大グモと対峙していた。
腰を落とし、警棒を寝かせて両手で持ち、めいっぱい背後に引く。
それは後で調べてわかったのだが、剣道で言うところの霞の構えらしい。
七本脚で突進してきたネズミの頭めがけて、警棒をとてつもない勢いで突き出す。
棒先のスピードは、オレの目では捉えられなかった。
今度はうめき声を発する暇もない。
ネズミグモは顔面に警棒をめり込ませ、床に這いつくばった。
すかさず、クマの背後からジャンプしてきたサルモドキが、その上に飛び乗る。
腹を噛み千切り、脚を引き千切り、怒りの形相でクモを解体し始めた。
糸で縛り上げられたのが、よっぽど悔しかったのだろう。
食べもせずに、粉々の肉塊にしてしまった。
そんな怒りのサルを背にして、ぬいぐるみクマは、スルスルと警棒を縮める。
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