第15話 騒霊

30/37

533人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
意識を失ったポッチャリ真知子ちゃんを家まで送り届けるため、オレたちはベッピンさんのカングーに同乗した。 「わたしも、今夜は真知子のところに泊まります。ありがとうございました」 睦美ちゃんが頭を下げて、礼を言う。 「心配しないでください。今夜中には、害虫駆除と消毒を終わらせておきますので、明日からはあのお部屋で過ごされても何の問題もありませんから」 ベッピンさんは、彼女に名刺を渡した。 オレは名刺を横目で覗き見る。 『県立保健センター 害虫駆除係 担当 葵薫(あおい・かおる)』と書かれていた。 「睦美ちゃん、ちゃんと後片付けしておくから。部屋の鍵は、明日返すよ」 「修治さん、本当にありがとう。修治さんに相談して良かった」 何度も頭を下げて見送ってくれる睦美ちゃんを背に、オレたちは再び黄色い車に乗り込んだ。 マンションまで戻り、ネズミグモの肉塊を回収するために。 彼女は、上着を脱ぎ、ワイシャツを腕まくりし、靴下を脱ぎ、パンツの裾をたくし上げる。 トングとジップロック幾枚もつかんで、バスルームへ入っていった。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!

533人が本棚に入れています
本棚に追加