第15話 騒霊

33/37
533人が本棚に入れています
本棚に追加
/373ページ
ワイシャツのボタンを三つも外しているせいで、並んだどんぶりのような胸元が露わになっていた。 深い谷間に、ちらりと見える下着の色は、黒。 いやいや、駄目だ。オレは余計な欲望を振り払って、掃除に集中する。 「それにしても、夜はまだ冷えるわね」 グビグビとコーヒーをあおりながら、膝を抱えてオレの仕事ぶりを監視している彼女。 唐突に尋ねてくる。 「あなたが、梅田哲郎?」 違う、と首を振ると葵さんは「だってジュビリー二号のブリーダー名は、梅田哲郎になっていたわよ」とつぶやいた。 「それはメインブリーダーの名前。オレは、稲葉修治。サルモドキの保護者」 そうなんだ、と生返事をしながら、またコーヒーを飲む。 「じゃあ、丸潟の家畜被害がピタリと止んだのって、あなたたちのしわざ?」 ああそうだ、と今度はオレが生返事。見てないで、掃除を手伝ってくれよ。 「で、家畜被害の次は、天井裏のクモ退治? 何なの、野良ラバナスを始末するヒーローにでもなったつもり?」 なんか、ムカツク言い方。
/373ページ

最初のコメントを投稿しよう!