第15話 騒霊

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「そんなんじゃねーよ。全国大会前の練習みたいなもんだよ」 「へぇ。でも今日は危うく食われそうになったじゃない。あたしたちが駆けつけなきゃ、ジュビリー二号は招待状を誰かに譲ることになってたわ」 「そんなことねーよ。あのぬいぐるみがいなくたって、シンタロウはクモごときに負けやしねーよ」 ムキになって振り向くと、今度はタバコを吸っていた。 「ああ、タバコ! ここは禁煙だろ!」 「いいじゃない、一本くらい」 悪びれた様子もなく、コーヒーの空き缶を灰皿代わりにして、煙を噴き上げた。 なんだか、腹の立つ女。外見偏差値は七十五でも、性格偏差値は三十五だな。 「っていうか、あんたは何者なんだ? この部屋にクモラバナスがいるってことを知ってたのか?」 彼女はニヤリと笑った。 「害虫駆除係には、いろんな情報が入ってくるのよ」 孤軍奮闘の甲斐あって、バスルームの血痕は洗い流し終えることができた。 でも、八本脚が壁につけたくぼみや傷は戻せない。 水しぶきでビショビショになったオレに、タオルが投げ込まれる。
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