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「そんなんじゃねーよ。全国大会前の練習みたいなもんだよ」
「へぇ。でも今日は危うく食われそうになったじゃない。あたしたちが駆けつけなきゃ、ジュビリー二号は招待状を誰かに譲ることになってたわ」
「そんなことねーよ。あのぬいぐるみがいなくたって、シンタロウはクモごときに負けやしねーよ」
ムキになって振り向くと、今度はタバコを吸っていた。
「ああ、タバコ! ここは禁煙だろ!」
「いいじゃない、一本くらい」
悪びれた様子もなく、コーヒーの空き缶を灰皿代わりにして、煙を噴き上げた。
なんだか、腹の立つ女。外見偏差値は七十五でも、性格偏差値は三十五だな。
「っていうか、あんたは何者なんだ? この部屋にクモラバナスがいるってことを知ってたのか?」
彼女はニヤリと笑った。
「害虫駆除係には、いろんな情報が入ってくるのよ」
孤軍奮闘の甲斐あって、バスルームの血痕は洗い流し終えることができた。
でも、八本脚が壁につけたくぼみや傷は戻せない。
水しぶきでビショビショになったオレに、タオルが投げ込まれる。
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