第16話 犬猿

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車中は、オレにとって苦痛でしかなかった。 水色のラパンは、軽快なスピードで北陸自動車道を走る。 その四角い箱のようなボディはキュートなだけじゃなく、パワフルな足回りも備えていた。 快適なドライブだ。 長岡ジャンクションで関越自動車道に乗り換えて、南下。 赤城山まで、約三時間の道のりを、春風に背中を押されるように心地良く進んでいた。 車窓からの眺めがいい。 抜けるような快晴、青く萌え始めた山肌。 四月も二週目に入ると、気温もずいぶんとあがってきた。 もう、モンクレールダウンの出番は終わり。 今日は、アメリカンイーグルのパーカーを着こんできた。 車のウインドウを下げ、時速九十キロで飛びこんで来る若芽の香りを、めいっぱい吸い込む。 頭の中で再生されるBGMは、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTの『GT400』。 ああ、ドライブもたまには悪くない・・・こいつらと、一緒じゃなければ。 「窓を開けたら、暑いじゃないか」 有無を言わせず、ウインドウが閉まっていく。オッサンが運転席から操作したのだ。
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