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近くに暴徒がいる可能性がある以上は叫ぶ事も出来ず、追い掛けて捕まえるしか手段がない。
しかし、足の速さは佐野が圧倒的に上。
差は開き、佐野は建物内へ入ってしまった。
遅れて朋香、そして後から付いてきた飯田も建物内へ。
取り敢えず、何事も無く建物内へ入れた事に一先ず安堵する。
だが、佐野は既に屋上へ続く階段を上がって行ってしまった。
『もう。 本当に勝手なんだから。』
悪態を付きながらも後を追うしかなく、階段を上がっていく。
各階に店が立ち並ぶ建物内を、暴徒がいないか確認しながら進む。
佐野の姿も足音も既に消えている。 走って屋上に向かったのだろう。
仮に暴徒がいたと思うとゾッとする。
『佐野さんが屋上に行ったのを考えると、彼等はいないみたいですね?』
飯田も同じ事を考えていたのか、額から汗を流しながら溜め息混じりに話を振る。
『そうみたいですね。 本当、良かったです。』
心の底から出た言葉に飯田も苦笑気味に頷いて答えた。
それでも、まだ安心は出来ない。 暴徒が他の建物にいて気付かれている可能性も懸念しなければならないのだ。
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