終末の日に

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「最悪だ…この世の終わりだ…」 道端でうな垂れ呟く、病に痩せ衰えた男性の嘆き。 私は幼い頃にこの病に打ち勝ち、それ以降は神に護られて平気なのですが、その嘆きは良く解ります。 しかし嘆くばかりで、こちらの言葉に耳を貸さない男の傍らを私は離れました。 こんな辺境の地でも、病魔の猛威は衰えていません。 そこかしこに病魔に侵され、死の旅路へと向かった人々の骸が転がっています。 弔う人も居ないままに、路傍に打ち捨てられた亡骸達。 中にはまだ息が有り、あえかな呼吸を繰り返す哀れな姿も見られますが、その命は最早風前の灯火でしょう。 病魔は老若男女、富める者、貧しい者、または悪人善人の区別もなく襲い掛かり、この世に在る事が奇跡と言うべき貴重な命を奪って行くのです。 今日は一人、明日は二人、明後日は四人とネズミ算式に。 爆発的に増えた死者を全て弔う事は叶わず、道端に人の遺体が打ち捨てられる嘆かわしい今の状況が生まれているのです。
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