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「最悪だ…この世の終わりだ」
「お爺ちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい。
お金は身体を売ってでも返します。
お願いですからもう少し待ってください。
お願いします」
俺達の目の前で土下座している80前後の爺と、18~9の孫娘の内、孫娘が俺達と爺に向けて謝罪していた。
事の発端は、爺の連れ合いの婆が癌に犯され入院した事にある。
孫娘の給料と年金で細々と暮らしていた一家に、高額な医療費が払える訳が無く。
病院から高額な治療費の請求をされ、支払えないなら退院するように迫られた孫娘が、働いている会社で経理を任されている立場を利用して、会社の運営資金の一部300万円を横領し、支払いに充てた事による。
孫娘は爺に、金は会社から借金したと説明していたらしい。
横領された会社の社長は、横領された金の出どころを詮索される事を恐れ、警察に告訴せず、俺達のボスである社長に金の回収を依頼したって訳だ。
この一家は入院費用を捻出するために、爪に灯をともす生活をしていたのだろう、このすきま風が吹き込む襤褸アパートの一室には、冬真っ盛りだというのに暖房設備は炬燵しか無く、テレビやパソコンの類も見当たらない。
その時、社長のすぐ傍にあった電話が鳴る。
社長は一瞬躊躇したが、受話器を取り返事を返す。
相手の言葉を聞きながら、身振りと手振りで静かにしているように俺達に伝える。
部屋の中は、電話越しに相手と会話する社長の言葉のみになった。
「うんうん、分かったよ。
でも爺ちゃんも婆ちゃんも足が悪くて外出できないから、取りに来られるかい?
うんうん。
お友達が取りに来るのだね?
うん、用意しておくよ」
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