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社長は電話を切ると俺達に指示を出す。
「表の車を目立たない所に移動させろ。
30分くらいしたら、このアパートに人が訪ねて来るから、逃がすなよ! 」
社長の指示が一段落ついた所で、俺は社長に声をかける。
「社長、誰からの電話だったのですか?」
社長は目の前で土下座したままの女を指差し、答えた。
「この女を名乗る女からの電話だった」
「え!?もしかしてそれって?」
「そ、オレオレ詐欺、あ、女だからワタシワタシ詐欺か」
社長は部屋の中を見渡し、話しを続ける。
「こいつらから金を毟り取ろうとしたって、高が知れている。
この女を名乗る奴が現れたのだから、そいつから金を取った方が良いと思ってな。
おい! 玄関の靴隠しておけ」
40分後、若いホストのような男がアパートを訪ねて来た。
男はキッチンと和室を隔てる引き戸を開けて出てきた、社長と俺を見て逃げようとしたが、アパートの外に隠れていた若い者達に捕らえられ、部屋の中へ突き飛ばされる。
「な、何をするんですか?」
若い男は周りを取り囲む俺達を見て、歯を震わせながらも精一杯の虚勢を張り、文句を言う。
社長が若い男に声をかける。
「お前らの事務所に案内してくれないか?」
「な、何の事ですか?
お、俺は、え、駅前で、お、女の子に頼まれた物、物を、取りに来ただけですけど」
社長は周りを取り囲む若い者達の1人からナイフを受け取り、若い男の顔に切っ先を向け、返事を返す。
「お前。
俺達が警察に見えるか?
喋らないのなら、お前の耳や指を切り落としていくぞ。
良いのか?」
鋭い眼光の社長の目を間近で見た若い男は、蛇に睨まれた蛙のごとく震えあがり、案内する事を承諾。
社長はアパートに俺と若い者1人を残し、詐欺師の事務所に出掛けて行った。
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