第8話 えぇ加減に、しんさい!!

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  1995年1月17日午前5時46分  兵庫県南部地震による阪神淡路大震災が起こった。  死者 6434名、  行方不明者 3名、  負傷者 43792名。  2016年の今年、  あれから21年が経った。  1月17日は、日曜日だったが、  追悼行事は、当初の半数に減ったと言う。   当時、私の知人にIさんという人がいた。  Iさんは、日雇い労働者だった。   ひょうきんな人だったが、  日雇い労働者の仲間の中では、  兄貴分のような存在だったらしい。  金がなくて、飯が食えずにいる仲間に  飯を食わせてやることもよくあると、  その仲間の者から聞いていた。   地震発生から何日かした頃、  その仲間の者が私を訪ねて来て、   「Iさんを見ないか?」  と聞いた。   日雇い労働者には、  家や決まった宿を持たない者も多い。  私を訪ねて来た者もそんな一人で、  地震が起こった時、繁華街のビルの陰で  仲間の一人と眠っていた。  その仲間は落ちてきた瓦礫に直撃されたと言う。  家族に知らせてやりたかったが、  実名も、出生も分からなくてできないと言った。   Iさんには、決まった宿があったのだが、  そこは全壊してしまっていた。   どうやら、そこにはいなかったらしいのだが、  地震以来どこにも  その姿を見なくなってしまったと言う。   私も地震以後  彼の消息を知ることはできなかった。  
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