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張りつめた空気の中、辺りに光の玉が出現し一か所に集まっていく。光が形作ったものは、一人の男だった。小奇麗な着物に身を包み、精悍な顔立ちをしていた。肉体があったときは、男前だとさぞかし周りの女からもてはやされただろう。だが、それは黙っていればの話だ多様だ。そいつは私の目の前に立つと、泣き崩れた。
「やめてください……私、まだ死にたくありません」
「死んでるだろ。もうこの世に未練なんてないでしょ。さっさとあの世に行って。燃やすよ」
「そんな過激な……せめて身の上話くらい聞いてください」
「じゃあ、さっさと話しなさい」
「名前は、名前は……」
「燃やす」
「あ、あ。思い出しました! 皐月(さつき)宗助(そうすけ)です」
「ほかには?」
「あ――あとは、覚えてません」
「燃やす」
騒ぎを聞いて飛んできた隊員たちが口々に止めながら私からジッポを奪い取る。その横では真昼間から、よよよと泣き崩れる幽霊。樹希(たつき)は水を持って構え、それを見て局長が楽しそうに笑っていた。
今やイワクツキ物件になってしまった私は、怪異に生命力を吸いつくされないうちに、目の前にいる三人を仕留める方法を考え始めていた。
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