3人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
一連の騒動が落ち着いた頃、幽霊――皐月(さつき)宗助(そうすけ)なる怪異は局長に向かって礼儀正しくお辞儀をした。
「この度は、助けていただきありがとうございます……」
「この怪異風情が――」
「待て待て待て待て。待つんだ、怒るな。落ち着け。人間になるんだ!」
「バカ樹希(たつき)。私は人間!!!!!!!!!」
出現した怪異に掴みかかろうとした私に、捨てられそうな女よろしく樹希(たつき)が縋り付いた。私はそれを引き剥がそうと、がしがしと肘打ちをする。それを止めるでもなく、局長が笑いながら言った。
「全然、まだ人間じゃないか。姿も行動も。春陽(しゅんよう)よりよっぽど理性的な人間だ」
「局長!!! 煽らないでください」
「すまんな、樹希(たつき)。面白くてつい、な」
「面白がらないでください」
「いやぁ、生きてる春陽(しゅんよう)が怪異みたいにきーきー怒って、死んで怪異になったやつが生きてる人間みたいに理性的なんだ。これを面白いと言わずに、何て言うんだ」
「怪異め、喰らいつくしてくれるっ!!!!!」
「ほらほら、どうやってだ?」
「やめてください、局長ーっ!!!!!!」
最初のコメントを投稿しよう!