第3話

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 それからひとしきり、局長にからかわれ、怒った私を見て怪異が怯えまくり、樹希(たつき)が私を諌めるという行動をしばらく続け。より詳しい情報を求めて、死亡記事を漁るためにこの世ならざる者と共に資料室へと向かった。  ガララと盛大な音を立てて、扉が開く。あいている席を見つけ、パソコンを起動する。その間に、死亡記事を特定するための情報はないかと、樹希(たつき)が幽霊相手に質問し続けていた。 「えっと――皐月(さつき)宗助(そうすけ)さん……は、どうして死んだんですか?」 「分かりません。覚えているのは、誰かに会いたかったということくらいしか」 「せめて死の前後とか思い出せませんか?」  うーん、と唸りながら後ろにふよふよと浮いている物体が唸る。考えているふりだけなのか、すぐさま答えが返ってきた。 「――――何も」 「役に立たないわね」 「も、申し訳ありません……」 「そう責めるなよ。怪異には記憶の混乱も喪失も珍しいことじゃない。その時の強い想いしか覚えていないことの方がほとんどなんだよ」 「じゃあ、名前の信憑性は薄いってことね。実質なにも分かってないじゃない」 「まぁな。でも、意外となんとかなるもんだ。小さな手がかりから調べて、未練を取り除く方法を捜していくんだよ、普通はな」  敵意むき出しで言葉を繰り出し続ける春陽(しゅんよう)を抑えるように、樹希(たつき)は笑顔で取り成した。  もう燃やされることはないと安心したのか、背後でほっと息をつく音だけが聞こえる。これ以上役に立たなければ本気でお焚き上げでもしてやろうか、と思いながらも何とか自分を抑えることに成功した春陽(しゅんよう)は、矛先を変えることにした。 「普通じゃなくて、ごめんなさい」 「お前は、怪異を敵視し過ぎる。局長が育ての親だし、あの人の腕の事を考えればそうなるのも分かるが……少しは彼の意も尊重してやれ」 「……煩い。それ以上言ったら、頭燃やしてアフロにしてやる」 「俺に八つ当たりするのやめてくんない?」  そうこうしているうちにパソコンが起動した。絞り込む情報もないので、とりあえず検索欄に<皐月(さつき)宗助(そうすけ)>と打ち込むと、死亡記事がずらりと並んだ。これは捜し出すのは骨が折れそうだ。
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