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死亡検索記事をあさり続けて早数日。
隅田川での死亡事故が多く、皐月(さつき)宗助(そうすけ)の身元を特定するには至っておらず、今日もひたすらパソコンに向かって記録をあさり続けていた。
「――それで、宗助(そうすけ)さんは鼓を鳴らしてたのはどんな時だったんですか?」
「私が鼓を鳴らすときは、決まって月が丸い時です。無性に鳴らしたくなるんです。どうしてかは分からないですが、自分がここにいるっていうのを知らせないと、と思って。もちろん、誰に自分の存在を知らせているのかは分からないんですが」
日がな一日、座り続けているとだんだんとストレスが溜まってきていた。
いつもであれば走り込みをするか、訓練をするかで解消するが、日が経つごとに体がだるくなって来て動く気すら起きなくなっていった。そんな私の状況とは反比例するように、怪異である皐月(さつき)宗助(そうすけ)は日ごとに元気になっていく。当たり前だ。皐月(さつき)宗助(そうすけ)が私の生気を吸い取っているのだから。
「ちょっと……いつまでも喋ってないで手伝いなさいよ。いい加減にしないと、樹希(たつき)はアフロにする。あんたは、喰う。刀がなくたって、憑りつかれてる今ならか、のう……?」
目を丸くして、樹希(たつき)と幽霊がこちらを見ている。心底驚いた顔をして。あまりに微動だにしないので、私の背後に何かあるのかと思って振り返るが――なにもなかった。
「なに?」
「いや、今……あんたって言ったから驚いて」
「はあ?」
「いつも、私の事を『怪異』とか『皐月(さつき)宗助(そうすけ)』と物のように仰っていたので……」
「これだけ長く一緒にいれば、そういう呼び方もめんどくさくなるのよ。察して」
楽しそうに樹希たつきと皐月(さつき)宗助(そうすけ)が目を合わせた。が、今の私にそれを気にしている余裕はなかった。体調が、すごく、ものすごく悪かったからだ。繰り返し繰り返し見る、彼の死に際の夢のせいで寝不足だったから。眩暈と頭痛が酷く、調査に集中できない。
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