第4話

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「あの……憑りついている私が言うのはおかしいのかもしれませんが……春陽(しゅんよう)さん、体調は大丈夫ですか?」 「うるさい。とっとと終わらせたいから、話しかけないで」 「名前を呼ぶのまで許すなんて、ずいぶん仲良くなったなぁ。でも、もう少し仲良くしろよ」 「煩い、黙れ、無駄口叩くな、穀潰し共」  身体の不調を堪えながらさらに数時間ほど過ごしていると。資料室中に樹希(たつき)の声が雷鳴のごとく轟き、椅子がひっくり返った音が響いた。 「見つけた!!! この写真、宗助(そうすけ)さんでしょ!?」 「……はい。私です」  私たちは周囲に向かって無言で両手を合わせ、ひとしきり謝罪をすると再びモニターに向かった。  本人曰く、皐月(さつき)宗助(そうすけ)――彼の本名は『藍澤(あいざわ)宗助(そうすけ)』。24歳。職業は商家の番頭だった。 「――年12月17日未明、隅田川にて死体が発見された。死因は刺殺。何度も刺されていることから、怨恨の可能性を示唆している。  死体の横には女性用の簪かんざしが落ちていたことから、何らかの関係があるかと思われたが隅田川は道ならぬ恋人達の密会スポットでもあったため、関連性は不明。  時間も遅かったため、藍澤(あいざわ)宗助(そうすけ)も誰かと密会をするために待っている時に刺されたものと推測される。  刺された位置からして、被害者と同等の身長を有している男性と思われる。また恋人は商家の娘の可能性があるが、目撃者もなく本案件は不明点が多すぎるために捜査終了……」 「怪異歴10年……その割には……」  後ろで申し訳なさそうにしている怪異――藍澤(あいざわ)宗助(そうすけ)に向かって言い放つ。それを聞いていた樹希(たつき)が、こともなげに言い差した。 「それだけ『自分』が残ってたって事だろ。それはそれで珍しいが。しっかし、この事件ずいぶん中途半端な所で捜査が終わってるな」 「所詮ここも国に飼われてる組織。藤(ふじ)家って言ったら、国御用達くにごようたしの豪商だし、圧力でしょ。それよりも、藤(ふじ)皐月(さつき)のところにリンクが貼ってある」  リンク先をクリックすると、次の報告書とある事件の記事が現れた。
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