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「――だから、調査の意味ちゃんと分かってるか?」
「辞書上の意味でよければ暗唱してあげる」
「そう言う事じゃなくて、命令を理解してたかってことだよ」
「質問の意図は分かってる。子供じゃないし」
「十六歳はまだ法的には子供だ。春陽(しゅんよう)に何かあれば、俺が怒られる」
「いい大人が、すぐさま自己保身に走るとは世も末ね」
延々と二人で言い争いをしつつ道中を歩いていると、どこからともなくポンポンと何かの音が響いてきた。
周囲を見てみるが、どこにも音の発生源は見当たらない。春陽(しゅんよう)は注意深くあたりの気配を探るが、本当に発生していないのか小さすぎてわからないのか、怪異がいるような気配はしなかった。
「春陽(しゅんよう)? どうした?」
「聞こえない?」
「何が」
「……たぶん、楽器の音。太鼓を叩くような感じだけど、太鼓ほど重い音じゃない――これは、鼓の音?」
「鼓ぃ? んー……ぽつぽつと怪異の弱い気配がしてるけど……音は聞こえないな」
こんなに激しく鳴っているのに、どうして彼には聞こえないのだろう。
不思議に思いながら、どこで鳴っているのか興味を惹かれて、音の位置を探っていく。がさがさと草をかき分ける音と河のせせらぎに混ざって、かすかに聞こえていた音がどんどん大きくなっていった。
「おい、待てって。お前に弱い怪異の気配は分からないだろ……俺にも分からないってことは、そのうち消えるようなものだって。気にする必要あるか?」
「音は絶対にする。早く帰りたいなら、先に行ってて」
さらに雑草が覆い茂る中へと入っていく。いつでも刀を抜けるように腰に手を当てながら。
しかし、音の正体は中々見つからなかった。伸び放題になっている草木と暗闇が邪魔をして、視界が悪い。よたよたと歩いていると何かを蹴った。その途端、ぽんぽんと煩いほど鳴っていた音が一瞬やんだ。どうやら、音の主を発見したようだった。
「樹希(たつき)。手伝う気があるなら、こっちきて。この辺当てて」
「あー……」
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