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が、そんな私も成長0なわけではない。
オジャマムシーが先輩に恋してるなら、それを逆手に取る方法を思い付いた。
アヤツは、先輩の恥になるようなことはしない。
なんか、偉い人が来て、私の成長ぶりを見に来ると、とりあえず適当な演技をして、その場を適当に取り繕う。
おそらく、今は練習だから言うことをきかないが、本番では、適当な演技をするのだろう。
ならば、練習せずとも、ショーには問題が発生しない。
が、それでは私と先輩の距離は確実に近付かない(先輩とのマンツーマンレッスンも魅力だけど)。
ここは、私自身が成長した姿を魅せて、『頑張った私』を魅せたい。
私は檻の中で欠伸をするオジャマムシーと向き合った。
が、私が前に来た瞬間にオジャマムシーはそっぽを向く。
それでもいい。
言葉が聴こえれば、それで。
「あんたさぁ、適当な演技をしとけば、とりあえず客は満足で、先輩は私の不甲斐なさを嘆くだろうとか思ってるかもだけど、知らないよ?
私と一緒に、あんたも"ダメなヤツ"の烙印押されても?」
瞬間、オジャマムシーが激しく羽ばたき、暴れる。
フフ、かかった。
ここで、私は檻にズイッと顔を近付けた。
「だからさ。とりあえず取引しない?」
オジャマムシーは暴れるのを止め、私の言葉を待った。
今までで、初めて、私の言うことをきいた瞬間。
「とりあえず、言うことききなさいよ。
……先輩のこと、諦めるからさ」
絞り出すように言った声を、オジャマムシーは黙って聞いていた。
しばらく待ったけど、その後も、声をあげることも、暴れることもなく、ただ沈黙するのみ。
「明日のリハ、期待してるから」
それだけを残し、私はオジャマムシーから離れた。
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