プロローグ

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ついさっきまで、美術館の中には平和な時間が流れていた。 ささやき声だが、楽しげな会話。 あふれる笑顔。 素晴らしい絵画へ向けられる賛辞の視線。 子供達は、少々退屈そうで。 「ねぇ、早く出ようよ」 と急かす少年は、親から無言で手で制されている。 いつもと変わらない、ありきたりの日常。 それは、本来ならばずっと続くはずの光景で。 永遠に続くと誰もが思っていた。 たった今までは。 それを壊したのは、ほんの数人の窃盗団。 誘拐、放火等、何でもござれの凶悪集団。 美術館内は、恐怖と悲鳴に包まれ、ある者は叫び、ある者はへたり込み、またある者は、これは現実ではないと逃避していた。 しかし、そんな人々には目もくれず、窃盗団は「仕事」をさっさと遂行していく。 素人が見ても分かるほどの高価な絵画を持っていた大きな袋の中へと次から次へと詰めていく。 それは、見事としか言えないほど手際がいいものだった。
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