第1章

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「何!?」 リーダーの声がうわずる。 目を見開いたのが分かった。 「早いな。もうバレたか」 彼は、忌々しげに舌打ちしながら、人質に目をやる。 そんな彼とは対照的に、人質達の顔には、不安の中にも「これで助かるかもしれない」という安堵が見てとれた。 「もう平気だ。きっと無事に帰れる」 信成は、親友達にこっそりと耳打ちをする。 それを聞いた四人は、ほっとした様に軽くうなずいた。 「よかった…」 涙で顔がぐしゃぐしゃになっている河野が思わず言葉を漏らす。 だが、しかし。 思わぬ事態に苛立っていたはずのリーダーの顔に一瞬笑みが浮かんだ。 「だったら、人質をとって逃げろ。拳銃をつきつけて脅せ」 あくまでも冷静で静かな口調。 それがかえって恐ろしさを煽った。 一ヶ所に集められて震えていた客も館職員も、顔が凍りつく。 人質にされて連れていかれてしまったら、どんな目に合わされる事か。 生きて帰れるのだろうか。
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