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そんな彼を安心させる様に、信成は、努めて冷静な声を出す。
「大丈夫だ。これくらい、何ともない」
起き上がり、河野に優しく笑いかけた。
今の自分に出来るのは、これくらいだ。
そんな一連の行動を見ていた黒いヒヨドリのリーダーは、ため息を吐きながら手下を叱りつける。
「警察が来てるというのに、何をしている。捕まりたいのか!」
「いえ…。申し訳ありません」
手下は、素直に頭を下げて謝る。
「気に入らねぇんですよ。この生意気なガキ」
だが、リーダーは取り合わない。
「何をするにしても、逃げ切ってからにしろ」
そう切り捨てると、警察の存在を知らせた別の手下に向かって少し焦った様に尋ねた。
「警察の動きはどうだ?」
すると、手下は、口角を吊り上げながら、「問題ありません」と告げる。
「我々がすでに館内から脱出してる事には、まだ気付かれてない様です」
そして、足早に皆より先へ進むと、左右を確かめる様にキョロキョロと首を横へ動かした。
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