第1章

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だが、それで引き下がる信成ではなかった。 「二人もいらないでしょう?河野は解放してよ!」 その言葉に、河野が敏感に反応する。 「信成と一緒じゃなきゃ嫌だぁぁぁっ!」 顔を涙でぐちゃぐちゃにしながらも、震える声で叫んだ。 おいおい。 信成は、焦りながら内心でつぶやく。 せっかく逃がそうとしてるんだから、拒まないでくれよ。 もちろん、河野の気持ちはありがたいのだが、彼にとっては自分より河野の安全が第一なのだ。 「いいから!お前は逃げろ!」 それに対して、 「嫌だぁ…っ!」 と嗚咽しながら、首を左右に振る河野。 軽い言い合いになる。 それが苛立ちに油を注いでしまったのか、先ほど「黙れ」と信成に告げた手下が、チッと舌打ちしながら声を荒げた。 「うるさい!」 大人しくしていろ!と、拳銃を突きつけながら怒鳴る。 河野が「ヒッ」と悲鳴を上げ、信成も仕方なく口をつぐんだ。
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