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だが、それで引き下がる信成ではなかった。
「二人もいらないでしょう?河野は解放してよ!」
その言葉に、河野が敏感に反応する。
「信成と一緒じゃなきゃ嫌だぁぁぁっ!」
顔を涙でぐちゃぐちゃにしながらも、震える声で叫んだ。
おいおい。
信成は、焦りながら内心でつぶやく。
せっかく逃がそうとしてるんだから、拒まないでくれよ。
もちろん、河野の気持ちはありがたいのだが、彼にとっては自分より河野の安全が第一なのだ。
「いいから!お前は逃げろ!」
それに対して、
「嫌だぁ…っ!」
と嗚咽しながら、首を左右に振る河野。
軽い言い合いになる。
それが苛立ちに油を注いでしまったのか、先ほど「黙れ」と信成に告げた手下が、チッと舌打ちしながら声を荒げた。
「うるさい!」
大人しくしていろ!と、拳銃を突きつけながら怒鳴る。
河野が「ヒッ」と悲鳴を上げ、信成も仕方なく口をつぐんだ。
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