第2章

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長い髪を後ろで束ねた信成は、この事件で誘い込み役と見張り役を担っていた。 防犯カメラの映像を見る限りでは、脅されてやらされている様には見えない。 どう見ても、窃盗団の一味だ。 「何で…?」 宗ちゃんが呆然とつぶやく。 実家の魚屋を継いだ彼は、先程から「早く戻ってこい」と店から呼ばれているが、もちろんそれどころではない。 「一体、あいつに何があったんだよ…」 貴司もその端正な顔を曇らせた。 彼らが知っている信成は、悪戯はするが、決して犯罪に手を染める様な人間ではない。 これは何かの間違いではないのか。 だが、しかし。 TVでは、コメンテーターが「手慣れている事から、初犯ではないだろう」と解説していた。 「何か理由があるんだよね…?」 不安げに尋ねる宗ちゃん。 それを聞いたミッチーは、思わず声を荒げる。 「当たり前だろう!?意味もなく、信成がこんな事をするか!」 その剣幕と声の大きさに、通行人が驚いた様に振り返っていた。
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