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考えてみれば、ゲームの中だと思えば大型車より大きなトカゲだって珍しくはない。村長に頼まれて(別に頼まれたわけじゃないが)討伐する、村の祠を占拠してるレベルの魔獣ですら実際に対峙してみるとこんなにもヤバイのだ。四聖獣がちょろいはずもない。だとすれば。
そうだとすれば。この世界のどこかには二日目で四聖獣を一体倒すような奴がいるというのに、こんなトカゲ一匹すら倒せない俺は――
「俺はもう、平凡じゃない」
靴の裏がでこぼこした洞窟道を擦り、ズザザッと音を立てて止まる。
身体測定で、身長が全国平均で安心する俺。体力テストで、B評価に満足する俺。学力テストで、テスト期間中にゲームしかしていなかったのに赤点を回避したと勝ち誇る俺。ゲームの中ですら、負けた時に限って「ゲームなんて所詮遊びだし」と言い訳をする俺。
「この世界の俺はもう、雑魚じゃねぇ!」
鎧蜥蜴に再び対峙した俺は、無意識に背中から剣を抜いていた。この時のために鍛え上げた己の分身を、何故信じようとしなかったのか。まだ、この剣はあの鎧を斬れないと決まったわけじゃないのに。
「シャアアアアア」
「うらああああ!」
突進の勢いそのままに咬みついてくる鎧蜥蜴の牙をステップで右前方へ避け、ついでに左前脚を斬りつける。
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