第5話「公式イベントとギルドマスター」

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 ファミリーカーのような体型の通り、やはり鎧蜥蜴(メイルリザード)の動きは鈍く、動きをよく観察し攻撃を避けながら執拗に左前脚に斬り傷を刻み続けること七回。左前脚は体重を支えるだけの強度を失い、鎧蜥蜴は左前方に躓くように倒れ込んだ。 「とどめっ」  低くなった頭部、特に鎧のような鱗の繋ぎ目を狙って、地を蹴り両逆手に持った長剣を振りかざし、渾身の力を込めて突き刺した。  最後の一撃はせつないとよく言う通り、悲鳴もなく、鎧蜥蜴の全身は砕け、光の玉となって俺のシンキへと吸い込まれた。 「よし、いける」  俺は確信した。ここは適正レベルダンジョンだ。頑張ればソロ攻略も可能なはずだ。村長の言うことが正しければあと何体か大きな魔獣がいるらしいが、一体ずつ来てくれればなんとか倒せる。二体以上来たら今度こそダッシュで逃げてカイティング(敵をおびき寄せて引き離す戦法)で一体ずつ倒していこう。  倒せる相手だと分かり調子づいた俺は、意気揚々と洞窟の奥へ進み、祠の前で鎧蜥蜴二体に出くわし、慌てて逃げようとしたら後ろからも二体現れ、あっという間に窮地に立たされてしまった。 「あー、なるほど。そういう展開ね。分かれ道あるなぁと思ったら、そこに潜んでたわけね」  窮地には立たされた。しかし、俺は昔から優柔不断ではないことだけが取り柄だと自負している。さっきもう、決意は固め終わったのだ。モブや一般人でいるのはもうやめた。本当にこの世界で英雄になると、もう決めてしまったのだ。
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