第5話「公式イベントとギルドマスター」

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  「ならば、英雄としての行動を取るまでよ!」  再び剣を抜き、臨戦態勢の鎧蜥蜴達に向けて掲げて見せた。 「蜥蜴も青龍も恐るるに足らず。何故なら、俺の中にも龍が眠っているのだから。聖なる龍を討つ為に鍛えられし魔剣と、邪なる龍をこの身に宿す俺が引かれ合うのも運命(さだめ)。さあ、今こそ目覚めよ!我が血肉に宿りし邪龍!神が与えし我が分身、邪龍剣(シンキ)を仲立ちとし、魔が蔓延る彼の地にて顕現せよ!」  俺の意志と呼び声に応え、長剣は成長を始める。いや、真の姿を解放し始めた。鍔には龍の文様が浮かび上がり、白銀だった柄から刀身までを漆黒に染めていく。  脳が体に伝達したのは、例え四面楚歌だろうが、信念を貫き全力を以て戦えということ。それだけのはずなのに、右手が勝手に動き、逆手に持ったシンキを地面に突き立て、口が勝手に開いていた。 「唸れ邪龍剣!ドラゴニック・ディザスタアアアアアアアア!」   全身の血が一気に心臓へと集められ、手の平を通ってシンキの中へと流れ込むイメージ。確かな力の流れを感じると共に、俺の視覚もそれをビジョンとしてハッキリ捉えた。  足元には、突き立てられたシンキを中心とした半径20メートル程の複雑怪奇な魔法陣が紫色の光で浮かび上がり、その中から円を描くように這い出てきたのは、魔法陣の直径と同じくらい大きな黒い何か。それはまるでエネルギーそのものが顕現したかのようで、俺が想像する通りの邪悪なドラゴンを形造り、そいつが回転しながら天へと飛び上がった。  魔法陣の中を、真っ黒な嵐が吹き荒れたのだ。その中にある、俺以外の全てを喰らいながら。
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