第5話「公式イベントとギルドマスター」

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  「おお、神よ……」  間髪入れず、恐らく16方向に現れた魔法陣を確認し、俺は駆け出した。勿論逃げ出したわけではない。16体のクワガタが現れる前に、この包囲から脱する。案の定、16体の輪の外に飛び出た俺を狙ったクワガタ達は、何体かが仲間を巻き込んでビームを放ち、その分余裕を持って、何とか16体を各個撃破した。 「ククク……GMよ、相手が悪かったな。我が邪龍剣と魔剣の前では、どんな謀略も噛み砕かれるのだ!」  叫ぶ俺の周りに、数えきれないが多分32個の魔法陣が現れる。魔法陣は増える毎に俺からの距離が遠くなっていくが、ギリギリ射程圏内。勿論、俺の射程の話だ。 「俺にはこのスキルがあるのさ!唸れ邪龍剣!」  32体のクワガタが現れると同時に、邪龍剣を地面に突き立てる。俺の魔法陣が、全てを呑み込む。さっきの鎧蜥蜴4体と、今倒したビームクワガタ31体の魔石が、全て吐き出される。 「ドラゴニックゥ!ディザスタアアアアアアアア!」  顕現する邪龍。一発もビームを放つことなく掻き消える、32体の魔獣。 「快っ、感っ」  なんかもう、この一撃を放つためだけにここまで頑張って来たような気さえする、爽快感。やったぜ、乗り切ったぜ。なんて、本気で思ってはいないけども。  そこには何の感情も、ゲームやアニメのように展開を盛り上げるBGMもなく、ただ無機質に、当たり前の事のように、64個の魔法陣が俺を取り囲んで現れた。もう、どう頑張っても一撃目の前に一体を倒すこともできない距離になっていた。今倒した32体分の魔石を使ったスキルでも、範囲外。
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