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「俺の名前は矢吹雅臣。あんたと情報交換がしたい。宜しく頼む」
石碑から立ち上がり、名乗りながら俺の目の前まで近寄ると、握手を求めてきた。マジか、初対面の人間に握手とかなんてリア充。
「よ、よろしく」
反射的にリア充のペースに呑まれてしまうのが非リアのオタクというもの。ついつい手を握ってしまい、このままじゃいかんと、一つ咳き払いをしてから言葉を繋いだ。俺はもう、冴えないゲームオタクの山田太一じゃない。邪龍と魔剣の力によって神をも殺す英雄なのだ。
「俺の名はソード・オブ・イービル。邪龍を宿し魔剣に選ばれた男だ。気軽にイービルと呼んでくれて構わない」
「ん?山田太一じゃないのか?」
「何故知っ……ごほん。それは日本で使っていた仮の名だ。何故石碑に刻まれているのか知らんが、真名はソード・オブ・イービルだ」
「あー……そうか。ま、呼び名なんてどうでもいい。さっきの口振りからして、あんたはMMORPGに詳しいんだよな?」
俺の設定の話は突っ込まれると厄介なので軽く流されるくらいが丁度良い。矢吹の話の早さに流石と感心し、俺は頷いて答える。
「ああ、詳しい。俺はどう考えてもゲーマー枠で招かれた参加者だ。この状況からして、矢吹のように頭脳明晰で呼ばれた奴らにMMOの基礎を教える役割を担っているのかもな」
辺りの混沌とした状況を見回す俺に、矢吹は深く頷く。
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