第5話「公式イベントとギルドマスター」

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  「ああ、大半は一週間も経たずに死んでここに来ている。そりゃそうだろう。いくら身体能力が上がってると言っても、スーパーマン並みってわけでもない。ライオンよりも凶暴な魔獣がウヨウヨいるこの世界で、教科書とルールの範疇でしか生きてこなかった俺達日本の高校生がそう簡単に生き残れる訳もない。この強制送還イベントが始まるまで死なずに戦ってこれただけで、あんたは相当強いってことになる」  そうか、俺は俺が思っている以上に特別な存在だったらしい。進学校のリア充先生が言うのだから間違いない。 「ま、まあ、それほどでも、あるがな」 「だが、だからこそ、お前は俺達より出遅れている部分がある」  なんとなく話が見えた。確かに、現段階において俺はこの矢吹という男に聞きたいことが山ほどある。 「この街、王都ニーベルンについて。そして、この世界においての俺達“高校生”と呼ばれる存在について。それが、俺の出せる情報だ」 「いいだろう、悪くない交換条件だ。この俺、ソード・オブ・イービルの英雄譚。その序章を聞かせてやろうじゃないか!」 「この騒ぎが収まってみんなが落ち着くまでまだ時間がかかりそうだ。それまでここでのんびり話そうぜ、山田」 「あ、いや、だから俺の真名はソード・オブ…」 「そうだな、まずはこの街のことからだな。ヴァニラって王国の首都、ニーベルン。俺達高校生は“ふりだしの街”って呼んでるんだが」  会話のペースを掴むことに関してリア充に勝てないのは、異世界でも同じだった。
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