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「務まるさ。ゲームの中でだってやってたんだ。俺だってその気になりゃあ」
「認めろ。人には向き不向きがある。お前は俺にゲームの知識とゲーマーの性格を教えてくれればそれでいい。戦力としても期待している。だから、俺の相棒になれ」
矢吹は俺の肩にその大きな手を置いた。
相棒。横に立つパートナー。そいつは、こんなにも上から物を言われるものなのだろうか。断じて違う。こいつは俺を駒としてしか見ていなかったのだと、今初めて気がついた。
「俺を見下すんじゃねぇ!このリア充がぁっ!」
手を払いのけると、矢吹は舌打ちをし、ゆっくりと両手を体の前で構えた。これは確か、柔道の構えだったか。
「せっかく有望なパートナーを見つけたと思ったが、仕方がない。他を当たるとしよう」
言葉では諦めて引き下がるようなことを言いつつ、その姿勢は臨戦態勢そのものだ。
「一対一で戦う。こういうのはゲームでも“決闘”でいいのか」
「デュエル、と呼ぶことも多いな。正気か、矢吹」
「安心しろ。何度も死んだ奴はたくさんいるが、魔石がなくなる以外は何も支障は起きないらしい。剣で斬っても肉を裂く感覚もなくあっさり死ぬみたいだぜ。まるで魔獣と同じだよな、俺達も」
何がなんでも、俺がギルドリーダーとして名乗りを上げるのを阻止したいらしい。それにしても、人間相手に戦うなんて、そんなこと気軽にやっていいものか。
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