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「来ないなら、そこで寝てろっ」
跳ぶように間合いを詰める矢吹。俺は咄嗟に、右の剣を抜いてしまった。俺のシンキと矢吹の右腕のシンキがぶつかり合い、ガキィッ、と鈍く重い金属音が鳴り響き、ようやく周りの高校生達も俺達に気づいて視線が集まる。
お互いに大きく一歩ずつ距離を取ると、矢吹はギャラリーに向けて両手を広げた。
「安心してくれ、これは合意の上での決闘だ。恐らくこの中でもトップクラスの高校生の戦い方、是非みんな見ていてくれ」
「よく言うぜ」
今の一撃で、なんとなく解る。矢吹のシンキも、それなりに強化した代物だ。魔獣を恐れて戦おうとする者は少ないと言っていたが、こいつはしっかりと戦っていたらしい。
目的のために手段を選ばないところは好きになれないが、お陰様でとりあえずは戦い易い雰囲気になった。あくまでデモンストレーション。喧嘩じゃないから見てってよ。シンキはこう使うんだよ。そう言われては、見ている方も心置きなく歓声を上げられるってものだ。
「お前確か、この武器のことをシンキって呼んでたな」
おもむろに、と言えるほどに慣れた動作で、矢吹はシンキである右籠手から魔石を吐き出し、左手の中で転がした。
「お前のシンキの力も、見せてみろよ」
言いながら、矢吹は魔石をシンキの盾の部分に乗せた。いや、あれはきっと本来盾ではない。魔石をセットするためのパネルのようなものだったらしい。
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