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「随分と派手なスキルだな、山田。いや、正直侮ってた。こんなに強力なスキルは初めて見た」
喋り出す矢吹に構わず、更に距離を詰めるべく駆け出す。悠長に会話してる余裕は俺にはない。何故なら、俺のシンキの中には今倒した使い捨て魔獣5体ぽっちの魔石しか残っていないのだ。もう次のスキルを当てるのは難しい。一気に双剣を突き付けて降参させてやる。
「だがな」
俺の突進にも怯むことなく喋りながら、矢吹はいつの間にか左手に持っていた大きな緑色の魔石をシンキにセットした。
村で魔石を換金した時にいくつかの魔石を見たが、黒以外の色がついたものは初めて見る。それが特別な意味を持つことだと、ゲーマーなら直感で解る。
「来い、化け物!」
さっきの邪龍召喚と同じくらい大きな魔法陣から現れたのは、一見緑色のカマキリのような姿をした体高3メートル程の魔獣だった。二振りの鎌を持ち、全身は緑色の鎧のような鱗に包まれた二足歩行タイプのドラゴン。翼はないタイプだが、これはもうトカゲと呼べる貫禄ではない。
明らかに、群れで襲ってくる魔獣とは違う圧倒的なプレッシャー。ゲーム的に言えば、確実にネームドモンスターだ。
「キシャアアアアアッ」
「くっ、でけぇっ」
振り下ろされる鎌の攻撃範囲を回避するため、矢吹への直線ダッシュを中止して横へステップ。一瞬後に俺が走っていた地面が削られ、カマキリドラゴンの牽制に足を止める。
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