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「さっきのスキル、あの時の限界出力だったんだろ?今はもう魔石切れであれよりも小さい範囲しか撃てない。そんなとこか?」
矢吹は不敵に微笑む。
「まず、あれぽっちの範囲じゃ32体のクワガタを巻き込むことはできなかったはずだ。本来はもっと広い範囲のスキルであることが予想できる。じゃあ何故今、ギリギリまで近づいてから狭い範囲で撃ったのか。理由は単純、魔石がもうないからだ」
冷静に、淡々と、俺が目の前の魔獣とモンスターテイマー相手に成す術がないことを解き明かしてくれる。これは確かに絶望的な状況だ。俺には魔石がもう僅かしかなく、目の前の魔獣を倒したとしてもジリ貧は目に見えている。対して、矢吹の方はまだ余力が残っているように見えるし、奴のスキルは魔石の使い回しができる。俺の勝ちは薄い。
「だからどうした?」
俺はこの世界に選ばれた勇者だ。そして四聖獣を倒し英雄になる男だ。これくらいの逆境、トトンと軽く超えてみせる。
「うおおおおおお!」
邪龍剣と魔剣を握り締め、俺は雄叫びを上げながら再び駆け出した。
「キシャアッ」
立ちはだかるカマキリドラゴンの鎌を、シンキでいなす。飛び上がって鎌の根本を魔剣で斬りつけるが、やはり一撃で斬り落とすには至らない。
「チィッ」
地上に降りると、ほぼ真上から降り注ぐ斬撃。当然一撃で収まらず、左右交互に必殺の鎌が浴びせられるそれを、俺は両手の剣でいなし、弾き、ステップして避けるを繰り返し、二刀流同士の攻防は文字通り火花を散らせながらしばらく続いた。
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