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別に無謀な賭けをしたわけじゃない。勝算はある。まだ確実ではないが、解り始めていた、左手の魔剣の能力。
「ギシュァァァァッ」
ボロボロに刃こぼれした両鎌を掲げ、痛みにもがくカマキリ。体の一部とはいえ武器である鎌にも痛覚があるとは、残念な生き物だ。尤も、あの頑強さでは通常の手段で刃こぼれさせることはできないだろうが。
「もらった!」
再び飛び上がり、魔剣でさっき傷をつけた左鎌の根本を狙う。追撃することで十分な深さまで達した魔剣の刃は、まるで茹でた芋を包丁で斬るみたいにあっさりと、カマキリ自慢の鎌を斬り落とした。
恐らくこれが、魔剣の能力。さっきビームを霧散させたのと同様に、魔獣の体に触れた時の感覚がシンキで斬る時と違う。それは単に切れ味の問題ではなく、触れる度に相手の体を削っているような、蝕んでいるような、そんな感覚なのだ。恐らく、魔獣の元となっている魔石の更に元となっている力、魔力とでも呼ぶ力に強い耐性を持つ剣。それが、セイリュウを倒すべく100年前に作られた魔剣の正体だ。
「今だああああああ!」
刃を一つ無くし、急激に攻撃範囲の狭まったカマキリの大股をスライディングでくぐると、もう目の前には矢吹の姿が見えた。巨大なタンクに守られて安心しきっていたモンスターテイマーの虚を突く特攻。いくら柔道の中学チャンピオンだろうが、丸腰では俺の双剣の相手にもならない。勝ちは俺の手の中だ。
「やるじゃないか山田。だが、これで詰みだ」
リア充の吠え面を期待していた俺の予想に反し、矢吹は再び不敵に微笑んだ。
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