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「確かに痛かったが、この公式イベントじゃあ良い駒が手に入ったぜ。大量にな」
魔石をセットしたまま待機状態だった矢吹の前に、U字状に並ぶ魔法陣。その数、16。
「クソがっ!」
ついさっき嫌気が差すほど繰り返してきた戦闘の再現が、ここで行われていた。一斉に現れ、俺を取り囲むビームクワガタ達。カマキリにクワガタって、お前は昆虫博士かよ。
「撃て」
向けられた砲身から、あの熱線が放たれる。スライディングを終えようという俺の姿勢では、ジャンプ回避は間に合わない。考える余裕もなく、反射的に、俺は片膝をついたまま、一か八かシンキを逆手に握った。
「唸レ邪龍剣ドラゴニックディザスター」
16本の熱線が俺の体に迫り、もうほぼ焼き尽くされたのだと感じる程の熱さの中、しかして間一髪というタイミングで、不本意ながら抑揚のない早口詠唱によって呼び出した極小サイズの邪龍が、熱線をも喰らい尽くした。
「はぁっ、生きてる…」
賭けに勝った喜びもそこそこに、反撃すべく魔剣を構えて立ち上がる。が――
「ふんっ」
「ぬえっ!?」
ビームと邪龍によって一瞬塞がれた視界が拓けるや否や、飛び込んできた右腕。銀の籠手がはめられたそれが、魔剣を握る俺の左腕を掴む。奴は解っていた。読んでいたのだ。俺がカマキリを突破してくることも、ビームを邪龍で防ぐことも。
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