第6話「パーティー結成は成り行きで」

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 俺達高校生のコミュニティ、“ギルド”が設立され二週間。“エリアボス”という特殊な魔獣の存在は、最早ギルドメンバーの常識となっていた。ギルドの仕切り役、ギルドマスターこと矢吹雅臣が俺との戦闘の際召喚したカマキリのような竜こそが、ニーベルンの北西にある古代樹の森のエリアボスであることが明かされたからだ。その注目度が高い理由は、単に倒せば大きな魔石が手に入るというだけではない。エリアボスの魔石を使うことこそが、神に与えられし己の分身、シンキを新たなる段階へと押し上げる鍵になる。新たなる段階とは、即ち二つ目のスキル。スキルが一人につき一つというのは大原則ではなく、条件さえ満たせば複数のスキルを持つことが可能だと、矢吹は宣言した。  エリアボスはどれも強力で討伐は困難。しかし、一度狩ってしまえば数十年は同じ場所にエリアボスが現れないということも、矢吹率いる調査班が現地の伝承から明らかにした。つまり、スキルを複数持つことができる人数は限られている。それどころか、極端な話、一人のぶっちぎり強い高校生がエリアボスを全て狩り尽くしてしまった場合、そいつだけが複数のスキルを扱えるという状況になってしまう。エリアボスは早い者勝ちなのだ。  俺が矢吹の天下をいつかひっくり返そうと思うのなら、エリアボスの討伐は必須。だから、この状況は望むところだったはず。なのに何故、俺の手足は思うように動かないのか。
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