135人が本棚に入れています
本棚に追加
/248ページ
「も、もがっ!むぐああぁぁぁぁ!」
答えは単純明快。俺の全身に纏わりつき、全身を埋め尽くす程の多数の一頭身モモンガ型魔獣によって、身動きを封じられているからだ。
視界も完全にシャットアウトされている今、即席パーティーを組んだ二人の様子も確認できない。俺の方は数が多過ぎる。どちらか一人でも、この状況を打破できる態勢であることを祈るしかない。
「止まれ止まれ止まっ、ひやぁっ!とまっ、ふっ、うっ、ふふっ、ひゃまっ……ああっ、言えなっ……ふひぁっ」
神速の抜刀術を持つ黒野さんはダメそうだ。体中を這い回るモモンガ魔獣のこそばゆさに耐え切れず、スキル発動のキーワードを唱えられないらしい。もう一人に賭けるしかない。
「あっ、だめっ、そこ……んんっ、この子たち……じょうず……」
メリーさんもダメだった。色んな意味で。
こうなったら一発逆転の邪龍召喚しか手はないが、さっきの一発で俺の魔石残量はゼロ。袋や服のポケットに仕舞ってあった非常用の魔石も、全部このモモンガ達の頬袋の中。せめて少しでも腕を伸ばすことができれば、この程度の魔獣なら刃に触れただけで死滅させられるとっておきの魔剣に手が届くというのに。
「ギシャアアアアアアアア!」
俺の魔剣を弾き飛ばした巨大モフモフ魔獣の雄叫びが、すぐ目の前まで迫っていた。見た目は埋もれて眠りたい衝動に駆られる程プリティだが、その強さと大きさ、そして厄介な能力は間違いなくエリアボスと呼べるクラスのものだ。こんな身動きの取れない状態で攻撃されれば、一撃で王都送りは必至。
何故、こんな絶体絶命の状況に陥ってしまったのか。話は2時間前に遡る。
最初のコメントを投稿しよう!