第6話「パーティー結成は成り行きで」

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  ***  王都ニーベルンは、大陸のド真ん中に位置しており、その名の通りこの大陸で最も栄えている大都市である。それだけに、各地からの流通の要となる陸路が滞りなく整備されており、俺が辿り着いた南の要所、サウパの町までの道のりは驚く程に平坦なものだった。  何故、俺がわざわざ四聖獣のいなくなった南へと赴いたのかというと、寧ろ四聖獣がいなくなり、他の高校生が目を向けなくなったこと自体が理由である。そう、俺は今、王都ニーベルンにある高校生の集落にとても居辛い立場なのである。  考えてもみろ。あんな見事に噛ませ犬の役割を果たし、その上矢吹からの誘いを断っておきながら、どの面提げて寮の部屋を使えるというのか。寮には高校生一人につき一部屋、立派な部屋が用意されているのだが、その部屋の並びは50音順故、あの矢吹と隣室になってしまうのだ。気まずいことこの上ない。  よって俺は、高校生とすれ違う度に指を差され、「あの時負けてた人」と呼ばれ続けることに嫌気が差し、高校生と会うこともない南の街道を進み、二―ベルンから少し離れた町、サウパをひとまずの拠点とすべくやって来たのである。  そこで厄介な騒動に巻き込まれることになるとは、町の宿屋でチェックインを終えたばかりの俺はまだ知る由もなかった。 「な、なんだぁっ」 「ひやぁっ」 「魔獣だっ、魔獣がいるぞっ」  部屋に食糧や外套等の荷物を置き、魔石入りのポーチと二本の剣だけを身に着けた格好で宿屋の階段に差し掛かっていた俺は、表参道から響いたその騒ぎ声を聞きつけ、駆け足で宿屋から飛び出した。  別に困っている人を助ける正義の味方を生業(なりわい)とする気はないが、俺がこれから滞在しようという町の中に魔獣が出たと聞いては、黙っているわけにもいかない。
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