第6話「パーティー結成は成り行きで」

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 シンキを持つ右手に意識を集中し、今得た魔石の量を確認する。換金しても銅貨0.1枚分にしかならない程度の量だ。王都の庶民御用達、固い黒パンが銅貨1枚なので、この魔獣を狩って昼食代を稼ごうと思えば、50体は狩らなければならない。パンは2個、銅貨2枚のサラダ、銅貨1枚のスープ付きの計算である。  魔獣は魔力の宿るものにしか牙を向けないとはいえ、これだけ体中を這い回られていても町人に一滴の血も流れている様子はない。魔獣を倒して得られる魔石はその強さに比例している。つまりこのモモンガは、その魔石量が表す通り、一般市民にかすり傷を負わせるだけの殺傷能力すら持ち合わせてはいないのだ。  すばしっこさと飛行能力と頬袋による運搬能力に特化した魔獣。今まで牙や爪や巨体を武器にした魔獣としか戦ったことがなかったが、こういうタイプもいるのか。その目的は一体どこにあるのか、非常に興味はあるが、今はこの事態を収拾する手を考えなければ。 「うらあああ!」  左手の魔剣も抜き放ち、双剣を用いて俺に飛びかかる個体や地面に払い落とされた個体を続けざまに8体切り裂いた。しかし、被害の声は建物を挟んだ別の路地からも聴こえ、一向に収束する気配はない。 「キリがないな。一体どうすれば…」  せめてゲームの盾持ち戦士のように挑発行動(タウント)スキルでも使えれば、町中を走り回り半径数十メートル以内の魔獣の注目(タゲ)を集めて一気に殲滅、なんてこともできるのに。
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