第6話「パーティー結成は成り行きで」

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 これは自意識過剰とかではなく、俺のことを知らないということはこの女の子が特殊な人物である可能性も出てくるという話だ。たった300人しかいない高校生。噂が広まるのもそう時間のかかることではない。ギルドマスター就任のあの出来事を知らないということは、あの公式イベントの際寮にいなかったという可能性が高い。  実はあの公式イベントの前後、矢吹は事前に石碑の名前から作成した名簿を使い、高校生全員の出欠を取っていたのだ。そして、驚くことに3人の欠席者が浮かび上がった。男子2名に女子1名。流石に名前までは聞かなかったが、その3人はあの攻略不可能と思われた公式イベントをクリアし、まだ一度も死を経験していない“未帰還者”として、ギルドの重要な捜索対象とされているらしい。  まさか彼女が、その“未帰還者”の一人なのだろうか。だとすれば、スタート地点から徒歩で王都に向かっている途中ということになる。  色々と興味本位に問いただしたい気持ちがあるが、今はそれどころでもない。まずはこの事件を収束させよう。 「ま、いいや。さっきの斬りっぷりなら問題ないだろうし、君はこの辺で地道にプチプチ魔獣斬ってて。私は魔獣避けのところに…」  言いかけて、彼女は町の出口の方を振り向いた。俺も彼女同様にそちらから聞こえる呼びかけに気付き、双剣を握り締めて身構える。
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