第6話「パーティー結成は成り行きで」

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  「だ、誰かっ、そいつを捕まえてくれー!」  魔術師風のローブを身に纏った老年の男性が声を上げながら走り、その前で数人の衛兵が腕を振り足を上げ全力で疾走し、更にその前では右側だけ頬袋をパンパンに膨らませたモモンガが軒を飛び渡り、一向は土煙を上げながらこちらへ近づいていた。 「魔獣避けの魔石はそいつが持ってるぞー!」  先頭を走る衛兵から呆気なくこの事件の解決法が提示され、俺は戦闘態勢を維持しつつ、フードの刀使いを置き去りにして前へ出た。  高校生を狙う魔獣の本能故か、モモンガは左の軒から飛び立ち、俺目がけて滑空を始めた。 「こいつを仕留めりゃ、俺がヒーロー!」  立ち止まって双剣を振り被り、他の個体よりも二回りは大きいそのモモンガへ向け、X字の袈裟斬りを見舞う。 「ムキュッ」  しかし、モモンガは一枚上手だった。他の個体と違い、尻からのジェット噴射を行い、空中で急加速したのだ。 「むべっ!?」  俺の会心のX斬りを掻い潜り、俺の顔面に着地したモモンガは、俺の顔面の上で再びジェット噴射を行い、路地を挟んで反対側の軒へと飛び立った。このジェットが純粋な空気の噴射であると信じたい。 「ああー!もうダメだ、逃げられる!」  思いのほか強力なジェット噴射により建物を飛び越えようとしているモモンガを目で追い、衛兵達が諦めの声を上げる中、俺は視界の端で捉えていた。  腰に刀を構え、抜刀のモーションに入っている彼女の姿を。
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