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「俺は……ソード・オブ・イービル。邪龍剣に導かれ、魔剣に選ばれし者だ」
二本の剣を背中の鞘に納め、クールな口調を心がけて呟いた。強そうなシンキだけでなく本物の魔剣まで扱う漆黒の双剣士。格好いいと思われるに違いない。
「えっと……槍道部の飯部さん?得意の槍が手に入らなくて苦戦してんだね」
あかん、低いトーンで聞き慣れない単語を呟いたもんだからごっそり聞き間違えられた。
「いやいや、違くて。よく聞いてくれ。俺の名はソード・オブ…」
「あぁっ、山田太一くんだぁ」
横から告げられた俺の世を忍ぶ仮の名に思わず振り向くと、魔獣避けの魔石を取り戻し沸き立つ衛兵達の間をすり抜け、茶髪でゆるふわロールのJKが俺を指差しながら近づいてきた。
その姿を見た瞬間JKという単語が出てくる程に、ブラウスとカーディガンを着こなした疑う余地のない高校生である。ならば俺の名を知っていても不思議じゃないが、なんてタイミングだよ。
「ほら、やっぱそうだよね。あの時やられてた山田くんだよね?ほらほらとうかっち、リアル山田くんだよぉ、マジウケるね」
「いや、知らんけど。有名人なの?山田くん」
「えぇ、とうかっち知らないのぉ?あの初イベの日、矢吹くんにボコボコにされてた山田太一くんだよ」
「あぁ、あの時の。槍道部の山田くんね」
やはり、俺の真名を広めることは叶わないのか。しかしこの女子二人、知り合いだったということは未帰還者ではないのか。なら、二人して何のためにこんな外れの町にいるのだろうか。
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