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「強いんだよ、山田くんは。矢吹くんには秒で負けてたけど」
「あーもうわかった、山田太一だよ、山田でいいから、その話はもうやめてくれ。何で俺がわざわざこんな南の町にいるのか、察してくれ」
格好つけることは完全に諦め、流石に秒ではなく分で負けていたがそこには触れず、ゆるふわガールに手の平を見せて制止した。
「なるほど。寮には居場所がなくなったわけだ」
黒野さんにズバリ言われ、恥ずかしさと情けなさに顔を歪める俺に対し、ゆるふわガールはマイペースに思案を始めた。
「うーん……山田くんのことも、“たいちっち”って呼んでいーい?」
「もうなんでもいいや。それで、そちら方は何でこんな南の町に?こっちに進んでも四聖獣はいないぜ」
思わず漏れる溜め息に、ゆるふわガールはクスリと笑った。
「木ノ下、芽梨。メリーちゃんって、呼んで、いいよ」
言いながら、彼女は流れるような隙のない動きで俺に詰め寄り、気付いた時には腕が組まれていた。
世の中にはスキンシップの激しい女子がいると聞いたことがあったが、てっきり都市伝説の類だと思っていた。まさか俺が出会える日が来るとは。
腕に押し付けられる柔らかい感触が一体どの部位なのか、逆に近すぎて視界に入らず、かといって意識をそちらに向けていることを二人の女子に勘づかれたくもなく、俺はあえて視線を逸らすことにした。
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