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「ああ、はいはい、メリーさんね。そ、そんで?何でこの町に?」
視線を逸らした先にいた黒野さんと目が合い、ドキリとしたが、メリーさんの過剰なスキンシップにも俺の隠しきれない動揺にも無反応のまま、黒野さんは町の住人達の様子に目を向けた。
「ちょっと人を待ってんの。多分この町を通るはずだからさ」
さらりと返された答えに、俺は首を捻らざるを得ない。待ち合わせにしても、何故わざわざこんな町で。王都か寮の中じゃダメなんだろうか。
「詳しいことは私も知らないんだけどぉ」
腕組みをスルーされたのが残念だったのか、黒野さんを見つめて心なしかつまらなそうな表情を浮かべ、メリーさんは俺の腕を離した。
「とうかっちの知り合いがぁ、最南端の街で別れたきり一度も王都に戻って来てないんだってぇ」
「え?それってつまり……」
「いわゆる未帰還者ってやつだねぇ。超すごい人だから会ってみたいしぃ、私もあんまり早く帰りたいわけじゃないしぃ、とうかっちにお付き合いしてるのぉ」
そうか、これはこのゲームのクソ仕様といえるだろう。パーティーメンバーの一人が死んでしまった場合、その一人だけが王都で復活し、他のメンバーと離れ離れになってしまい連絡を取るのが難しい。
ただでさえ、未帰還者は死んでも復活できることをまだ知らないのだ。 連絡の取りようは全くない。
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