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「あいつは……錬也は、きっと私はもう死んだと思ってる。目の前で誰かが死ぬのは二度目みたいだったし、多分今かなり精神的に追い込まれてると思う。早く顔見せて安心させてあげたいから、王都へ行くには絶対に通るこの町で待ってるってわけ。メリーには別に付き合う必要ないって言ってんだけどね」
「だってぇ、やることないんだもん」
黒野さんの口から出た男の名前に焦りを感じ、俺は自分が無謀な期待を抱いていることに気が付いた。
そもそも、前提条件として、ここに来た高校生はみんなリア充という話だったじゃないか。このレベルの女子高生に彼氏がいない確率はどんなもんだろうか。俺は英雄になると決めたじゃないか。少なくとも、この世界で彼女を探す気など毛頭なかったはずだ。
かと言って、その錬也とかいう男に良い印象を持てるはずもない。
「れ、錬也ね。へぇ……でもどうだろうなぁ。今頃すれ違いで王都に死に戻りしてなきゃいいけどなぁ」
意地の悪い仮説を唱える俺に、メリーさんがニヤニヤ笑いを浮かべている。この女子は、おっとりとした天然キャラを装っているが、一つ一つの所作や表情に全くあどけなさが感じられない。いろいろなことを分かっていて、あえて口に出さず眺めている。きっとそういうタイプの人だ。
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