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手紙
小学四年の時、幼馴染が転校することになった。
引っ越し先は遠すぎて、簡単に訪ねられる場所ではなかったし、電話をするにもお金がかかりすぎる。だから、手紙を書き合おうと約束した。
遠い引っ越し先から幼馴染が手紙をくれる。私がそれに返信し、そこからはかわりばんこに手紙を出し合った。
そんなことがもう七年。
どちらも高校生になり、大学への進学を考えていた私は、ある日手紙に、もしよかったら一緒の大学に行かないか書いた。
さすがに高校は地元の学校に通ったけれど、大学は遠くの学校も視野に入れていた。もし向こうもそういう気持ちがあるならば、大学は同じ学校に通うことができる。
もちろん、相手には相手の進路があるし、こちらもそこいらはまだ具体的ではない。ただ、どうせなら、そういう未来もあるのではと、手紙で幼馴染に伝えてみた。
暫く経って返事が来た。進路についてはまだ漠然としていて、具体的な目標などはないけれど、同じ学校に通うという案は素敵だと書かれていた。
それからの手紙は、大学進学についての内容が主体となった。
互いの学力、将来の夢、そういったものを具体的にしながら進路を絞っていく。
お互い妥協はせず、かといって高望みもしすぎず、現実をしっかり見据えて一緒に行ける大学を探し、検討し、受験に備えていった。
でも、その希望に満ちた夢はある日突然壊れてしまった。
幼馴染のお母さんから入った連絡。交通事故で彼女が死んだ……!
聞いた瞬間目の前が真っ暗になり、私は深い絶望に陥った。でも、闇に沈んだ私を救ってくれたのは、報せから少し遅れて届いた一通の手紙だった。
事故に遭う少し前に出されたらしき手紙には、彼女の、希望に満ちた将来への夢が綴られていた。
それを読みながら私は泣いた。泣いて泣いて、とことんまで泣いた後、手紙を抱きしめて決意した。
途絶えてしまった彼女の夢は私が引き継ごう。そのためにまずは、一緒に通うつもりでいた大学に合格しよう。
努力する私の気持ちを両親は判ってくれ、家から離れた大学を受験することを応援してくれた。そんな両親の支えと、幼馴染の彼女に応えるために勉強し、私は第一志望の大学に合格した。
一人暮らしの部屋を決め、引っ越し、入学に備える。その最中、荷物の一つがほどけ、中身が床に散らばった。
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