その時まで

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親だなと思う。 俺にとってもシャルマは親だった。 父さんにとっても親だったに違いない。 それでも俺の家系はとことんシャルマを求めてしまうらしい。 「いつからか女性として見ていましたよっ。父上もそうでしょうっ?」 俺にとってはばあ様だ。 女性を捨てていないばあ様。 恋愛になれたのはシャルマがその姿を若くしてから。 ほぼすぐリュースが俺の嫁にすると言い出したから、俺には相手を見極めるようなこともなかった。 嫁なら手を出していいかと思ってみたけど、邪魔される。 キスはもらえる。 シャルマの心を開く呪文。 シャルマのキスがほしい。 ねだれば、かわいいこと言うじゃないとキスをくれる。 そのキスにうっとりして、それ以上を求めると邪魔される。 「アスターもシャルマにキスを求めたのか。食われる恐怖なかった?竜が真竜を求められないのは、力を食われて自分がなくなると思う恐怖からだよ」 「…僕の半分でも食べてくれれば長生きしてくれるかなと…。シャルマ様の柔らかな肢体にも…興味はありましたし…」 「シャルマに手を出したのか?」 俺はそこは咎めるようにアスターに聞く。 アスターは慌てたように否定する。 「食べてもらう前に僕が食べようとしてしまって邪魔されましたよっ。真竜とキスをするには、食べてもらおうとするしかないんです。よって抱くことはほぼ不可能です。姫とラウルのように、男が真竜になれば別ですが。食べられてしまおうと受け身でいるのは難しいものです」 また裏技だ。 シャルマはもういないというのに。 そんな手があったのかと思わされる。 俺からキスできたのは、どこかそういうのがあったときか。 俺のものにしたいではダメだということだ。 知っていれば、あんなに失態を重ねることもなかったというのにっ。 悔しがっていたら、リュースに肩を叩かれた。 「リネリアを食べまくっただろ」 言われて、リネリアを見る。 リネリアは恥ずかしそうに顔を逸らす。 食べてばかりだ。 食べられるから。 …シャルマ。 また泣きそうになる。 食べたかった。 いや、食べた。 もう一度、食べにいってもいいかもしれない。 かわいいシャルマの喘ぐ声が思い出される。 その潤んだ熱を帯びた瞳に体が熱くなりそうだ。
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