10人が本棚に入れています
本棚に追加
上司に怒られないように。
ミスをしないように。
無難に仕事をこなす。
気付けばもう定時の時間。
何事もなく終われ。
「朝田。」
女性事務員が呼ぶ。
会社で唯一何でも話せる同期。
「シャトレの309号の下田さんから電話。」
「うわ、まじかよ。」
電話に出るとかなりご立腹の様子
あの人捕まると話長いんだよ。
「大変だね、朝田も。」
「霧島、俺が20時までに帰ってこなかったら拉致されたと思って。」
あはは、と笑い肩をバシバシと叩く。
「で、最近美玖とどうなの?」
霧島の紹介で美玖とは出会った。
栗色のセミロングに、ぱっちりとした目。
明るくてよく喋るし笑う。
俺にはもったいないぐらいの子だった。
「今日会うよ。」
「お前も来る?鍋でもしねぇ?」
「行く行く!美玖にも連絡しとくね。」
こうやってたまに3人でご飯を食べたりしている。
上京してきたときは右も左もわからない。
地元とは全然違う。
俺の憧れた東京は寂しくて、切ない街だと感じた。
最初のコメントを投稿しよう!