第1話

4/12
前へ
/114ページ
次へ
上司に怒られないように。 ミスをしないように。 無難に仕事をこなす。 気付けばもう定時の時間。 何事もなく終われ。 「朝田。」 女性事務員が呼ぶ。 会社で唯一何でも話せる同期。 「シャトレの309号の下田さんから電話。」 「うわ、まじかよ。」 電話に出るとかなりご立腹の様子 あの人捕まると話長いんだよ。 「大変だね、朝田も。」 「霧島、俺が20時までに帰ってこなかったら拉致されたと思って。」 あはは、と笑い肩をバシバシと叩く。 「で、最近美玖とどうなの?」 霧島の紹介で美玖とは出会った。 栗色のセミロングに、ぱっちりとした目。 明るくてよく喋るし笑う。 俺にはもったいないぐらいの子だった。 「今日会うよ。」 「お前も来る?鍋でもしねぇ?」 「行く行く!美玖にも連絡しとくね。」 こうやってたまに3人でご飯を食べたりしている。 上京してきたときは右も左もわからない。 地元とは全然違う。 俺の憧れた東京は寂しくて、切ない街だと感じた。
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加